REPORT

「みんなの脳世界〜ニューロダイバーシティー展2023〜」を開催しました!!

2024年9月19日

2023年9月17日(日)18日(月)に、第1回となる「みんなの脳世界〜ニューロダイバーシティー展2023〜」を開催しました。ニューロダイバーシティプロジェクトの第1弾となった企画展「みんなの脳世界」には産官学から 33 展示コンテンツが集結し、トークセッションやワークショップも実施しました。「ちょっと先のおもしろい未来(ちょもろー)」と同時開催され、会場には2日間で延べ10,497人もの方にお越しいただきました!

日本を代表するさまざまな大学・研究所・企業から33コンテンツが出展

ニューロダイバーシティプロジェクトのメンバーによる合計33のコンテンツが出展され、たくさんの方に体験いただきました。会場は5つのエリアに区分けし、それらを順に巡ることでニューロダイバーシティへの理解を促しました。

多様な世界

まず、入り口に入ると「多様な世界」エリアがあります。ここでは私たちが世界をどのように捉えているかを紐解いていきます。苔をテーマに環世界について考える作品展示や、移動困難な方々が、分身ロボットを遠隔操作し、会場スタッフの一員として案内業務を行いました。

環世界インタフェースプロジェクト MTRL by Loftwork/Aug Lab by パナソニック ホールディングス株式会社/GADARA
分身ロボットを使った制約を超えるコミュニティ創造 株式会社オリィ研究所
空気触感伝送による情動共有鑑賞体験 渡邊淳司(NTT コミュニケーション科学基礎研究所)
超人スポーツ 展示体験コーナー 超人スポーツプロジェクト
わたしの脳世界 チームJSB-G 季里★あかほりこのみ★谷口直嗣

多彩な五感

次にメイン会場のホールに入ると「多彩な五感」エリアとなります。他の人の五感を疑似体験することで、一人ひとり異なる感覚の多様性に気づき、互いの違いを尊重し、つながりを深めることをコンセプトとしたエリアです。指の皮膚の感度を測ることで触覚の多様さを知る体験展示や、脳波を計測して刺激に対する反応の違いや共通点を見つける展示、音や光などの刺激をやわらげ感覚過敏の方のストレスを緩和することができるカームダウンボックスのコーナーなど、合計8つのコンテンツを展示しました。

VR技術を活用したアバターセラピー: 幻聴当事者との共創ワークショップ 東京大学大学院情報理工学系研究科 葛岡・鳴海研究室
認知症の世界を体験してみよう 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 Embodied Media Project/株式会社メディヴァ
触覚の個人差を体験しよう 名古屋工業大学大学院ハプティクス研究室/稲盛科学研究機構
感覚過敏にやさしい世界 株式会社クリスタルロード 感覚過敏研究所
あなたとわたしの脳波:近くて遠い感じ方の距離感 NTT人間情報研究所
あおはあか、あかはあお 国立研究開発法人情報通信研究機構 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター
まんじゅうは…こわい? 国立研究開発法人情報通信研究機構 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター
甘い形と苦い形 ー風味の視覚化ー 立命館大学認知デザイン研究室

人の力を拡げる

個人の感覚の多様性を知った後は、テクノロジーの力で個人のちからは拡張することができることを体験する「人の力を拡げる」エリアです。BMIを利用した脳機能のリハビリテーションの体験や、人間型の人工しっぽをつけたら私たちの動きはもっと自由になるのかを考える展示、振動と光によって音の特徴を身体で感じるユーザインタフェースなど、合計9つのコンテンツを展示しました。

個人の拡張ってどういうこと? B Lab
オンテナ 富士通株式会社 コンバージングテクノロジー研究所 ソーシャルテクノロジー 社会実装推進室 DE&Iプロジェクト
色のめがね・色のシミュレータ 株式会社ハウディ/ViXion株式会社
気づきと加齢にかかわる脳波を見てみよう 国立研究開発法人理化学研究所 認知行動支援技術チーム
熱や電気の効果でモノの感じ方が変わる!? NTT人間情報研究所 
Brain-Machine Interfaceで脳の使いこなしを鍛える 慶應義塾大学理工学部 牛場潤一研究室
ロボット技術とBMIで障害を克服する ⼀般社団法⼈WITH ALS/株式会社電通サイエンスジャム/NOUPATHY/慶應義塾⼤学⼤学院メディアデザイン研究科 Embodied Media Project/ムーンショット型研究開発事業⽬標1「⾝体的共創を⽣み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発」 技術協力:⽇本電信電話株式会社/NTT ソノリティ株式会社/株式会社オリィ研究所
ちょっと先の身体の拡張「Arque」慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 Embodied Media Project 
・オープンなのに、自分だけにしか聞こえない音体験(PSZ) nwm(ヌーム)by NTT sonority

環境を変える

個人特性の拡張とは別のアプローチとして、「環境を変える」選択肢があることを知るエリアを展開しました。ここでは、顔や属性を伏せた状態でVR空間上で交流しあう体験や、耳を塞がずに耳元に音を届ける技術の体験、さまざまな色覚特性を持った人に現在の社会環境はどう見えているのかを考える展示など、合計8つのコンテンツが並びました。

環境によって変わるってどういうこと? B Lab
エキマトペ 富士通株式会社 コンバージングテクノロジー研究所 ソーシャルテクノロジー 社会実装推進室 DE&Iプロジェクト
信号機が赤・青じゃなかったら? B Lab
ブッダボットとお坊さんと語ろう 京都大学 人と社会の未来研究院/株式会社テラバース
コモンズを守るには? 文部科学省 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(B) 「デジタル身体性経済学の創成」/明治学院大学経済学実験経済学研究室
家から出なくても通える学校や病院 横浜市立大学 Minds1020Lab (COI-NEXT「若者の解消し高いウェルビーングを実現するメタケアシティ共創拠点」)
プロジェクトエイリアン NHK「プロジェクトエイリアン」制作チーム
サイバネティックアバターで働き方はどう変わる? ムーンショット型研究開発事業目標1「身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発」

社会をつくる

最後は、これまで学んだことを踏まえて、みんながそれぞれちからを発揮できる社会とはどんな社会かを考えるきっかけを提供するための「社会をつくる」エリア。会場内の様々な場所がみんなにどんな感情をもたらしたかをシールを貼って共有してもらったり、身体のシルエットが書かれた大きな紙を貼り、私たちが普段、鼻、耳、口、目、皮膚から受け取る刺激で日々どんな感情を抱いているか、キモチを可視化するコーナーなどが並びました。

身体マップ:感じるままのキモチを書こう! 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(B) デジタル身体性経済学の創成/B Lab
環境マップ:あなたの発見をシェアしよう! 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(B) デジタル身体性経済学の創成/B Lab
触覚情動マップ:「デジタル身体性経済学の創成」へ向けた認知基盤 文部科学省 科学研究費助成事業 学術変革領域研究(B) 「デジタル身体性経済学の創成」

トークセッションを開催!

9月18日には「ニューロダイバーシティ社会に向けて」というテーマでトークセッションを開催しました。伊藤穰一氏(千葉工業大学 学長) 、牛場潤一氏(慶應義塾大学理工学部 教授) 、南澤孝太氏(慶應義塾大学 KMD 教授) 、吉藤オリィ氏(株式会社オリィ研究所 代表取締役所長 CVO)の4名が登壇し、石戸奈々子をモデレーターとして、環境の調整や、身体・脳機能の拡張により、すべての人たちが力を発揮できる社会の実現をどう目指せば良いのか、海外の実情などを織り交ぜながら、日本が目指すべき社会について議論しました。

鼓動に触れるワークショップ「心臓ピクニック」を実施!

渡邊淳司氏(NTT コミュニケーション科学基礎研究所)を講師とし、屋外で体験型のワークショップを開催しました。「心臓ピクニック」は、その 心臓を身体の外に出して、手のひらの上の触感として感じるワークショップです。自分自身の心臓はどんなふうに動いているのか、 手のひらの上でじっくりと味わい、また運動したり寝転んだりしながらその変化を確かめ、さらに他の参加者と心臓を交換してその違いを感じながら対話を試みました。

多くの皆様にご来場いただき、さまざまなコンテンツを体験し、楽しんでいただきました。来場者からは、「『ニューロダイバーシティ』という言葉を知らなかったものの、なんとなく自分の中でそういう考えや思いを抱いていた!」「どのコンテンツも見ごたえがあった!」「他の地域でも開催してほしい」などの多くのコメントが寄せられ、今後の展開に大いに期待が寄せられました。ニューロダイバーシティプロジェクトは今後も、ニューロダイバーシティへの理解を促進し、ひとりひとりがそれぞれの場所で各自の個性や「ちから」を発揮できる社会を構築することを目指して活動していきます。