子どもの発達に関する特性をオンラインで検査できる「LITALICO発達特性検査」
2024年11月18日
「みんなの脳世界2024~超多様~」展では、ニューロダイバーシティ社会の実現に取り組むさまざまな企業・大学・研究機関の最先端の研究成果に触れることができます。LITALICOがブースで紹介するのは、お子さんの発達に関する特性を検査できる「LITALICO発達特性検査」です。LITALICOの取り組みついて、ご紹介します。
<MEMBER>
- 榎本 大貴(株式会社LITALICO LITALICO研究所 クオリティマネジメント統括部 執行役員CQO)
- 野田 遥(株式会社LITALICO 研究員)
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株式会社LITALICO LITALICO研究所 クオリティマネジメント統括部 執行役員CQO 榎本 大貴氏(▲写真1▲)が、LITALICO発達特性検査の概要について紹介しました。
LITALICO発達特性検査は、保護者がお子さんの多様な特性をオンラインで検査できるプロダクトです。さまざまな特性の中でも特に発達に関する特性を検査できるのが特徴です。
当社ではこれまで長きにわたって発達障害の特性を持つお子さんや保護者の方々を支援してきました。その支援の入り口となるのは、お子さんの特性の把握や理解です。まずは、お子さんの状態・状況を把握して理解することが大切なのですが、その入り口となる機会を得られる保護者、どうやったら把握・理解できるのかわからない保護者、適切な医療機関を探して受診するには数カ月も待ってしまうという現状があります。そうした課題を解決することを大きな目的として、この検査を開発しました。
具体的には、お子さんの学習に関する困りごとや対人社会性に関する困りごとのほか、睡眠や感覚、運動など、さまざまな特性を網羅的に検査します。スマートフォンでもいいですし、パソコンやタブレットでも回答できます。約150問の設問に回答していただくと、その場でお子さんに関する世界に一つだけの、お子さんのことを説明した『取扱説明書のようなイメージ』が出力されます。短い時間で回答できるので、例えば、夜の空いた時間などでも利用していただけます。
これまでに1600人の保護者・お子さんが受験
LITALICO発達特性検査
LITALICO発達特性検査の紹介に続いては、みんなの脳世界展を主導するBLab所長の石戸 奈々子(▲写真5▲)が榎本氏と株式会社LITALICO 研究員 野田 遥氏(▲写真2▲)に、LITALICO発達特性検査の開発の背景や、測定方法、具体的な成果、出力されるレポートに対する反応、将来の展望などについて聞きました。
石戸:「LITALICO発達特性検査を活用するのは、児童精神科など医療機関を受診する以前のお子さんをお持ちの保護者の方々になると理解しました。現状、国内では児童精神科医の数が不足し、受診できるまでの待ちの期間が長いなどの課題もあるため、その間に不安もあってこの検査を受ける保護者もいらっしゃるでしょうし、一方、『まだ医療機関を受診するほどではないが、子どもの状態が気になる』という保護者もいらっしゃるでしょう。どのような方々がメインの対象者になるとお考えですか」
榎本氏:「お子さんの日常生活の中での状況に『困り始めた』『気になり始めた』という保護者の方々です。これまでに2,000人程度の保護者に受けていただいていますが、未就学のお子さん、小学校低学年のお子さんを持つ保護者がボリュームゾーンです。
つまり、すでに発達障害に関してよく知っていて、さまざまな医療機関を受診してきた保護者やお子さんではなく、『どうして日常の中で子どもや親が困ってしまうのか』、その理由を知りたいというケースが多いのです。LITALICO発達特性検査は、そういった人たちに価値を提供できると考えています」
石戸:「未就学から小学校低学年のお子さんがボリュームゾーンとのことですが、当初からそのゾーンをターゲットとして設問を設定していらっしゃったということでしょうか」
榎本氏:「必ずしも未就学、小学校低学年のお子さんをもつ保護者をターゲットにして開発したものではありません。例えば、設問も3歳から18歳までのお子さんを対象にし、その方々に対事前にアンケートを実施して回答いただくなどして、さまざまなデータを収集し、統計的な分析をして設計しています。未就学や小学校低学年ではないお子さんや保護者に受けていただいても、きちんとした結果を出力できます」
『不注意』『コミュニケーション』などの項目を
5段階評価して発達障害を測定
石戸:「具体的な設問などを教えてください」
野田氏:「それでは『不注意』というカテゴリーの測定項目を例にして説明します。(▲写真3▲)
直近3カ月以内で、例えば『自分の持ち物をなくしたり、忘れてきたりする』ということに対し、『当てはまらない』から『いつもある』まで5段階で回答してもらいます。アンケート結果など収集したデータを詳細に分析し、『細かいところに注意が払えない』といった不注意をうまく測定する項目を事前に検討して質問していきます。
不注意以外の『コミュニケーション』のカテゴリーでは、『相手の反応を気にせずに一方的に話し続ける』、『集団遊びにうまく参加できない』、『困ったときに周りに助けを求めることができない』といった設問を用意しています。他にも睡眠に関する項目、保護者と離れるときの不安が強いといった項目、運動や感覚の過敏さに関する項目なども用意しています」
石戸:「未就学時や小学校低学年くらいだと持ち物をなくすといったことはよくあるとも考えられます。精神科医によっては『最近、発達障害というラベルを張りすぎている』と警鐘を鳴らす先生もいます。小さいお子さんの場合、こうした検査が過度な診断につながってしまうという可能性についてはどうお考えでしょうか。また、そのリスクを防ぐために、どのような注意を払っているのですか」
野田氏:「LITALICO発達特性検査の重要なポイントは、『診断をする』というよりは、お子さんの特性や、現在の『困りの状況』を把握することを目的としているということです。保護者に対して、現在のお子さんの状況を含めて、どのような情報を提供するのがベストなのか、『個別最適な情報提供』に主眼を置いています。
そのため、年齢や学年に合わせた基準を用意しています。お子さんの年齢に応じて収集したデータから基準点を作成し、検査を受けた保護者やお子さんが、その基準点からどのくらい離れているのか、つまり『困りの度合いが強いのか』を検査しています。具体的には、『自分の持ち物をなくしたり、忘れてきたりする』項目では、例えば3歳のお子さんの平均点は5歳のお子さんに比べて高くなると思います。そういたことを考慮し、その年齢の中で基準・標準からどのくらい離れているかを踏まえて、困りの程度を判別しています。こうしたことで、過剰な診断にならないようにしています。
もうひとつは、検査全体のトーンとして、お子さんにラベルを貼るのではなく、困りの程度の強さに応じて『どのようなことをしたら良いのか』を伝えるところに重きを置いています。設問などもそのことを意識した書き方をして作成しています。『うちの子はこういう状態だからADHDじゃないか』と不安を煽ることや、過剰診断につながらないような表現を十分に意識した作り込みになっていると思っています」
医療機関や学校と共有・活用できる
子どもの発達特性の詳細な検査結果レポート
石戸:「保護者にとって大切なのは、どういう診断が下されるかではなく、『日々の生活の中でどのように対応していけばいいのかを知りたい』ということだと思います。そこにつなげる検査なのですね。発達障害の方の困りごとは十人十色と言われます。一人ひとり異なる特性がある中、2,000人以上の方々が検査を受けているとなると、かなりバリエーション豊かな結果がでているのではないですか」
野田氏:「実際に検査データの結果を匿名で確認できるのですが、やはり、かなりバリエーションが豊かです。さまざまな方々が受けてくださっていると実感しています。実際の検査結果のサンプルをお見せします。(▲写真4▲)
さまざまなカテゴリーで困りの程度が出るので、この数値を踏まえて背景やサポートについて考えることができます。何で困っているのか、どのような情報提供をしたらいいのかという手立ても含めて、幅広く考えていけるので今まで気づかなかったことも含めてカバーできるのが特徴です」
石戸:「未就学児から小学校、低学年だと、基本的に保護者が回答されることが基本だと思います。保護者からのどのような反応があったのかを教えてください」
野田氏:「お子さんの『現在の困りの状態がよく分かってよかった』という反応のほか、『実際に何をしたら良いのかがクリアに理解できて良かった』という反応も多くいただいます。
保護者にはお子さんにどのような関わり方をしたら良いのかを情報提供として伝えていますが、それがお子さんの結果に応じた『個別最適』となるように工夫して取り組んでいます。多くの保護者が何をしたらいいのか暗中模索だった中で、『まず試してみたいと思えるものが見つかった』といった声もいただき、そういったところがご支持いただいていると感じています」
石戸:「実際には医療機関を受診する前のお子さんや保護者が多いとのことでしたが、詳細なレポートが出力されるので、そのレポートを医療機関に受診する際に持って行くと、診察の参考になるのではないかとも思いました。レポートを医療機関や教育機関と共有することで、医療機関や教育機関からフィードバックを得るといった取り組みもあるのですか」
野田:「レポートをどのように活用するかは保護者にお任せしていますが、実際の結果をいくつかピックアップして、学校の先生への相談や医師の診察の際に持って行く、相談の土台にしていただくことは、我々としても実践していただきたい活用方法の一つです。そのことを意識してPDFに印刷できるようにもしています」
石戸:「実際に学校の先生方や医師の方々もしくは心理士の方々からの反応は聞かれていますか?」
野田氏:「まだ、保護者が持って行った後の状況についてヒアリングなどフォローアップできていない状況です。調査結果をどう作成するかを検討していたとき、作った後に医師や学校の先生からアドバイスやご意見を直接伺ったときには、レポートの詳しさや保護者に対する情報提供の質としては高いこと、学校でのサポート方法も出てきますので具体例が示されるのがすごく良いといった反応や評価をいただいています。
同時に今後の課題としては、レポートでは保護者への個別最適の情報提供に重きを置いていたので、どうしても分厚くなってしまっていました。情報量が多く、どこを読み取れば良いのか迷ってしまうというフィードバックもいただきました。よりご活用いただくために必要な情報のまとめ方を模索中です」
石戸:「個別最適化された対応方法をレポートで出すためのデータの蓄積に驚きますが、それはこれまでLITALICOが発達障害やグレーゾーンのお子さんたちに対応をしてきたことの膨大なデータが溜まっていたということでしょうか?」
野田氏:「今回の調査で言うと、新規の調査会社や弊社のメーリングリストに参加されている保護者様方にデータを取らせていただいたので、データとしては新しいです。ただ、この検査を作るためのノウハウなどは、これまでの蓄積がつながってきたものかと思います」
未就学のお子さん・保護者の9割が
コミュニケーションの問題でLITALICOに相談
石戸:「今、子どもを取り巻く環境が変化し、発達障害の子どもの割合が増えている、不登校の子どもが増えている、子どもたちのウェルビーイングが低下している、といった問題も指摘されています。また、国連から日本のインクルーシブ教育に関して勧告を受けるなど、教育環境は必ずしも理想的とは言えないでしょう。こうした子どもたちの状況を踏まえ、日本の教育現場が取り組むべきこと、もしくはご家族への支援という視点で社会に求められる取組があれば、長年にわたってこうした問題に取り組んできたLITALICOとしてのご意見を伺いたいです」
榎本氏:「私たちは、個々の保護者やお子さんだけではなく、行政機関や教育委員会向けにさまざまサービスを提供しています。例えば、教育委員会を通じて、学校現場でお子さん一人ひとりに適したカリキュラムを作るシステムや、そのシステムに付随する教材や研修を販売するサービスなどです。そうした取り組みを通じて感じているのは、学校の先生が特別支援教育に関して学ぶ機会がとても少ないこと、それを知るためのフォローもされていないことです。
学校の先生たちが特別支援教育を学ぶ機会を得て、特別支援学校や支援学級だけではなく、通常の学級の中でどのようにしてインクルーシブ教育のシステムを実装できるのかを考えていくことが大切だと思っています。
具体的に言いますと、今は特別支援学校や支援学級と通常学級は分かれています。そこから一気にフルインクルージョンを目指すのではなく、部分的に学びの場が連続であるような機会を作る、通常学級の先生と支援学校や支援学級の先生とが連携できる、つながるシステムを作っていくといった取り組みです。学校の文化や教員養成の過程の中でも、そういった機会があるといいと思います」
石戸:「我々が推進しているニューロダイバーシティプロジェクトは、一人ひとりが多様であるという考え方に基づいたプロジェクトです。榎本さんがおっしゃった通り、本来であれば通常学級においても一人ひとりの考え方や行動は違うという前提に立ち、学びの環境が作られると、より多くの子たちがより学びやすく、より生活しやすく、より生きやすくなる環境が作られるのかなとも思います。
ニューロダイバーシティ的な考え方が、より広く教育現場にも広がると良いのですが、先生たちの多忙さはいかんともしがたい状況です。そう考えると、社会全体でどう教育現場を支えていくか、サポートしていくかということも重要なのではないかと思います。
教育現場も変わらなければなりませんが、LITALICOに来る保護者やお子さんについて、これまでサポートをしてこられて何か変化を感じていることはありますか」。
榎本氏:「発達障害に関して社会全体に情報が普及し、啓発されてきていると感じます。それにともない、保護者が発達障害を意識して、知り、自分の子どものことを考えるようになるまでのリードタイムが短くなっているという変化があると思います。ある意味でライトに発達障害に関する情報を知ることができるようになったのはポジティブな部分です。
一方で、各種メディアで情報を得て、不安になったりどの情報が自分に合っているのかで気を揉んだりするといったことも増えているでしょう。ネガティブな側面もあります。
また、子どもの人数は減ってはいますが、通常学級の中で困りがありそうと考える児童・生徒の人数の割合が増えているという調査結果もあります。それを反映しているかのように、私たちのサービスに問い合わせいただく方々の人数は増えているという量的な変化も感じています」
石戸:「LITALICOに通われている保護者の方々の悩みについて、多い悩みをいくつかピックアップするとどういうことが挙げられますか」
榎本氏:「未就学児で圧倒的に多いのは、言葉の遅れやコミュニケーションに関する困難さです。数年前の調査では9割くらいがコミュニケーションに関するものです。診断名や傾向ですと、自閉スペクトラム症の傾向や診断に由来するところだと思います。次は『落ち着きのなさ』や『集団生活や集団行動ができない』というところです。
学齢期になっていくと、『学習に関する困難さ』というのもありますが、学習に関する困難さというのは、養育上、保護者では気づきにくい部分もありますので、どちらかというと、お子さんが『学校生活の中で過ごしづらそうにしている』といった様子です。それも対人面で過ごしづらいというのもありますし、学習面で過ごしづらいというのもあります。もう少し年齢が高くなり高校生になってくると、むしろ自立に向けた支援や心配ごとが、保護者のメインの悩みになってきます」
石戸:「保護者の方々の最終的な不安は、お子さんが自立して生きていけるかということが大きいのではないかと思います。進学、就労に関する不安はとても大きいでしょうし、相談もたくさんあるのではないかなと思います。その2点を取り巻く環境について、社会に訴えたいことがあれば、ご意見いただければと思います」
榎本氏:「お子さんの権利意識、権利擁護の観点が大切になるところです。子どもには幼くても自分の意見を表明する権利があり、それを保障するのが周りの大人の役割であるということを、保護者に対して支援者がどのようにお伝えしていくか、子どもにそういった概念をどのように伝えていくかはとても重要だと思います。
その権利に関する教育の機会は、子どもに対してだけでなく、保護者に対しても行っていきたいと考えています」
石戸:「一人ひとりが周囲に過度に合わせて過剰適応するのではなくて、自分らしく生きていく方法・術を知っていくということが長期的に安定して生活できるということなのかなと思います。その点において、権利の主張の仕方という話がありましたけど、それは社会側の受け入れ、社会受容も必須です。発達障害をカミングアウトすることも含め、社会受容に関しての変化は感じていらっしゃいますか」
榎本氏:「障害者差別解消法の施行や改正によって合理的配慮という考え方が、言葉としてメディアなどで取り上げられて、ある程度そういった概念が知られるようになったのは大きい変化だと思います。法律違反ということが明文化されたのも大きい変化だと思いますが、それに実態を近づけていくっていうところはまだまだ時間がかかると思っています。そこは実践を積み重ねていくのが大事だと思います」
合理的配慮よりも「合理的調整」を
相手の多様性を認めて「対話」することが大切
石戸:「社会、企業、教育現場で多様性のある個人をどう受け入れていくか、例えば学校ではお友だちがどのように理解をしてくれるか、会社に入ったら、上司、同僚、部下がどのように受け入れるか。その辺りの動きに関して、日本の状況は諸外国と比較してどのように見えていますか」
榎本氏:「要請に応じて対話の場を設けて、個々に応じた調整をしていきましょうというコンセプトが大事だと思います。その時に対話というキーワードをどれくらい私たちがこれまでの人生の中で学んできたかっていうところがキーだと思います。もしかしたら多文化な国の方が対話のプロセスに関する学びがあるかもしれないとも考えます。私たちの場合、集団の中である程度の同質性が担保されていて、当たり前に当てがわれているルールに基づいて振る舞っていくという環境で長い時間を過ごしてきました。そういうところから対話をベースにしていく振る舞いにするには実践や試行錯誤が必要だとは思っています」
野田氏:「合理的配慮や障害に関する差別に関しての法整備、それに対する理解の広まり方で言うと、世界の中でも欧米圏の方が先へ進んでいると感じています。一方で、困りの出方や環境を変えなければいけないポイントが、日本と他の国では異なるところもあると思います。日本の方がうまく受け止められているような個性や困りもあれば、そうではないものもあるというのが、フラットに見たときの状況なのではないかと感じています」
石戸:「合理的配慮よりも合理的調整という言葉の方がいいのではないかという議論もありますが、まさにマジョリティの考え方がマイノリティの感じ方や考え方を持つ人びとと同等な関係の上でしっかりと対話をして、調整をしていくという姿勢を持つことが大事かと思います。これまでは教育現場などでの同調圧力の強さも指摘されていましたが、これからは多様な考え方、多様な生き方、多様な姿勢、多様な行動をお互いに尊重する社会に変わっていく必要があるのではないかと改めて思いました」
榎本氏:「対話においては、主語を小さくすることが大事だと思います。例えば、発達障害のある人や自閉症スペクトラム症がある人と大きく捉えるのではなく、『ある個人とその場』や『ある個人と私』というように主語を小さくした上で対話に臨むことが大切です。
そのうえで、その人が『このシチュエーションはこうしてほしい』ということを聞く場を設けて、『それは今、無理』、『代わりにこのようにするにするのはどう』という対話をしていけばいいと思います。自分がこれまでの人生経験で関わったことがない属性や特徴の相手であると、距離を取ってしまうことによって対話の場自体が閉ざされてしまうという振る舞いになります。その部分に啓発や実践ができるといいかなと思っています。
ニューロダイバーシティは生物学的には自明の話だと思います。生物学的な自明さと照らし合わせて考えるならば、発達障害に関わらず精神疾患や認知症なども含めて身体的な多様性も含めて捉えていくことが大切です。したがって、関わる人たちを増やしていけるといいなと考えています」
野田氏:「私たちは『個と環境の相互作用によって、そこに障害が起きる』ということを話します。つまり、個の状況だけでも環境の状況だけでも障害は生まれなく、障害も生まれない代わりに個性も生まれないと思っています。その個の部分で言うと、その個の中でさまざまなグラデーションがある。今回で言うとニューロダイバーシティ、多様な部分があるというのが、思った以上に前提に置かれていないと思う瞬間がたくさんあるなと思っています。
個人は多様なのですが『普通はこうだよね』という言い方をされたり、ある種の当たり前はこうで、そこから外れたもののように扱われてしまう瞬間が社会の中で多いような気がしていて、そのような意味でも今回のニューロダイバーシティというグラデーションであったり、スペクトラムのような形で、個の特性や状況を捉え直していくことが大事だと思っています」
石戸:「問題は個と個の関係性の間に起き、その方々が対話して共創できるからこそ、個性が生まれると考えると、対話というのは非常に重要なキーワードだと思います。対話をするためにも一人ひとりの多様性に、全ての人がリスペクトの気持ちを持つという姿勢が広がるといいですね。ありがとうございました」